メイロンの投与量はどのくらい?濃度の違いは?使い方をマスターする!

どうもカピバラ先生ことDr.カピバラです。

ショック状態、特に敗血症性ショックなどでアシドーシスが高度に進行していた際に、「メイロンを使おう!」と言われたことはあると思います。

どのくらいの量を投与すればいいのでしょうか?
そもそも、どの濃度のものを使用すれば良いのでしょうか?

緊急の時は添付文書や教科書を見ている暇はないので、あらかじめ勉強しておきましょう。

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目次

メイロンの種類

大塚製薬から7%と8.4%の2種類の濃度が販売されており、それぞれ20mLと250mLと容量も2種類あります。
1.26%という濃度のものもあるようですが、使う頻度は少ないです。

2種類の濃度がある理由

元々は1950年に7%(0.833mEq/mL)のものが販売され、当時はめまいに対して20mL使う程度でした。
その後代謝性アシドーシスの補充の際に、必要量(mEq)=必要量(mL)だと便利という理由で1970年代に1mEq/mLである8.4%が販売されました。

ちなみに8.4メイロンが1mEq/mLであるのは
8.4% 20mLには炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)が1.86g(20mL ×0.084)、
つまり20.16mEq(炭酸水素ナトリウム 12mEq/g)含まれているのでほぼ1mEq/mLとなります。

適応

使う機会としてはアシドーシスめまいが多いと思います。
その他の適応として急性蕁麻疹や酸性薬物による急性薬物中毒(三環系抗うつ薬、フェノバール、アスピリン、ボルタレン)があります。
ちなみに塩基性毒物にはビタミンCを使うようです。

注意点

低カリウム血症では使用しない
アルカローシスでカリウムは低下するので、低カリウム血症時に使用すると増悪します。

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高ナトリウム血症では使用しない
8.4%メイロンにはNa 1mEq/mL含まれているため、高Na血症時に使用すると増悪します。
250mL投与した場合は食塩14.7g(NaCl 17mEq/g)相当です。
ちなみにNa血症時に使用する3%食塩水は510mEq/Lであり、8.4%メイロンは1000mEq/Lと約2倍の濃度です。

●呼吸性アシドーシスでは使用しない
重炭酸ナトリウムは体内で分解されてCO2になります。そのためCO2貯留による呼吸性アシドーシスでは使用すると増悪します。ただし人工呼吸管理下でCO2管理ができるのであれば投与は検討されます。

●配合変化が多い
アルカリ性であり、カルシウムイオンと沈殿を生じるためカルシウム塩を含む製剤との配合に注意が必要です。以下が配合変化の一覧となります。
https://www.otsukakj.jp/med_nutrition/haigou/meylon.php

投与量(理想)

メイロンの添付文書では、重炭酸不足量(必要量)は下記の計算式から導出します。

重炭酸不足量(mEq)=不足塩基量(mEq/L)×0.2×体重(kg)

<不足塩基量>
不足塩基量 = Base Excess(BE)の負の絶対値
 例1) BE = -2.0 ならば不足塩基量 = 2.0
 例2) BE = +3.5 ならば不足塩基量は0 (代謝性アシドーシスはないため重炭酸の補充は不要)

上記不足量(mEq)に対して8.4%、7%ではそれぞれ下記の計算式で投与量を決定します。

●8.4%の場合
必要量(mL)=不足塩基量(mEq/L)×0.2×体重(kg)

●7%の場合
必要量(mL)=不足塩基量(mEq/L)×1/4×体重(kg)

使いやすい8.4%メイロン(1mEq/mL)の場合、体重50kgでは不足塩基量×10(mL)を投与します。

また教科書によっては以下の計算式の記載もあります。

重炭酸不足量(mEq)=0.6 x 体重(kg) x (15 – 重炭酸(mEq/L))

この計算式の場合、体重50kgの時は8.4%メイロン20mLで重炭酸は0.6mEq/L程度の上昇が予想されます。

下記の記事で計算ツールを公開していますので参考にしてください。

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投与量(実臨床)

不足量の計算の仕方を紹介しましたが、実臨床では不足量を計算して補充することは少ないです。
pH<7.10の代謝性アシドーシスでは直ちに補正を開始しますが、その場合はまず8.4%メイロン250mlを30分程度で静注またはメイロン1mEq/kgを投与し、その後の血液ガス再検で必要があればさらに補正を検討します。
また人工呼吸器管理下であれば呼吸性アシドーシスでもpH補正のためにメイロンを使用することがあります。

またBICAR-ICUという研究では、ICUでのアシデミアに対するメイロンは予後に有意差がないと報告しております(詳細は各自で確認してください)。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)31080-8/fulltext

結論としては不足量を計算し補充することは正しいかもしれませんが、実臨床では重炭酸不足量を正確に計算して補充する必要はなく臨機応変に対応することが大切です。

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説明は以上になります。

大塚製薬株式会社 HPより抜粋しております。添付文書等の詳細が知りたい方は参考にしてみてください。
メイロン静注7%:https://www.otsukakj.jp/med_nutrition/dikj/menu1/000296.php
メイロン静注8.4%:https://www.otsukakj.jp/med_nutrition/dikj/menu1/000297.php


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この記事を書いた人

[専門] 救急、集中治療
[資格] ICLS、BSL、ACLS、PALS、JPTEC、JATEC、JETEC、MCLS
[所属学会] 救急医学会、集中治療学会、中毒学会、外傷学会
[趣味] マラソン、テニス

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