ガンマ計算を一瞬で行う方法をマスターする!

どうもカピバラ先生ことDr.カピバラです。

ICUでは大事なガンマ計算。
色々な教科書やサイトを見てもなかなか理解できず、使いこなすまでには時間がかかると思っていませんか?

ICUで働き始めたころは私も全く計算ができずカンファでいつも恥をかいておりました。
その後あることに気づいてからは、今では当たり前のように使えるようになりました。

色々な考え方があると思いますが、今回は自分がやっている方法を紹介します。
少しでもお役に立てたら幸いです。

目次

0.ガンマ(γ)とは?

まずはガンマとは何か。多くの教科書の記載では

1γ=1μg/kg/min
=0.001mg/1kg/min(∵1μg=0.001mg)
=0.001mg×体重(㎏)/min
=0.001mg×体重(kg)×60/h(∵1h=60min)
=0.06 mg/h×体重(㎏)
とシンプルになります。

体重50kgの人だと
1γ = 0.06 mg/h x 50kg =3 mg/h
濃度3mg/mlの薬の場合、3mg = 1mlのため
1γ= 3mg/h = 1ml/h となります。

と書かれているものの、どこが大事なのかよくわからないため実臨床ではいつも困っていました。
では早速、私が実臨床でやっている方法を紹介します。

1.基本

そもそも実臨床では、たとえばノルアドレナリン(Nad)の場合、
「血圧低い→Nad 2mL/hで開始→血圧改善しない→Nad 5ml/hに増量 …」
のようになるため「流速(ml/h)が何γなのか」を計算することが多いと思います。
最大流速が何ガンマだから流速いくつまで可能、という考えは、慣れるまでは一度やめましょう。

2.流速→ガンマ(初級)

さてついに本題です。ガンマ計算をマスターするには、まず
今いるICUでの薬剤の濃度・組成を知りましょう!!
ここが一番大事です。ここを知らないと、ガンマ計算は始まりません。
大体どこのICUにも薬剤の組成表はあるはずです。まずはそれを手元に置いてから先に進んでください。
さて手元にICU薬剤組成表を用意できたら、各薬剤の濃度を見てください。多くは『3mg/ml』だと思います。それはなぜでしょうか。

それは先に述べた通り1γ= 1ml/hだからです。
つまり「3mg/mlの薬剤を1ml/hずつ増やす=1γずつ増やす」と感覚的にもわかりやすくなります。
3mg/mlが最強と言われているのはこれが理由です。

3.流速→ガンマ(中級)

しかしどの薬も3mg/mlとは限りません。
たとえばNad(1mg/ml)は生理食塩水(Ns)に溶かして使用しますが、その組成は
①Nad 3mg + Ns 47ml
②Nad 6mg + Ns 44ml
③Nad 12mg + Ns 38ml
④Nad 6mg + Ns 34ml
と各病院ごとにかなり違います。

ではそれぞれ1ml/hは何ガンマなのか、どのように計算すればよいでしょうか。

①の組成は
3mg / (Nad 3ml+Ns 47ml) = 3mg / 50ml
濃度は3mg/mlの1/50倍です。
3mg = 50mlですから
1γ= 3mg/h = 50 ml/h
1ml /h = 1/50 γ = 0.02 γ
となります。

今の説明だけだと混乱した方もいるはずです。実は今の計算式は気にしなくてよくて、
私は常に3mg/mlを意識しています。つまり、

3mg / 50ml (= 3mg/ml x 1/50) の濃度の時は
1ml/h = 1/50 γなのです。

これだけ覚えれば中級は卒業です。

では②〜④の組成の時の1ml/hが何ガンマなのかを計算してみてください。

正解は
② 6mg/50ml = 3mg/25ml なので
1ml/h = 1/25γ = 0.04γ (①の2倍の濃度)

③ 12mg /50ml = 3mg / 12.5ml なので
1ml/h = 1/12.5γ = 0.08γ (②の2倍の濃度)

④ 6mg / 40ml = 3mg / 20ml なので
1ml/h = 1/20γ = 0.05γ

どうでしょうか。簡単に1ml/hからガンマが計算できますね。

4.流速→ガンマ(上級)

実は今までの計算、体重換算がされていません。
ICUの患者も様々の方がいますから、食思不振や高齢の方、高度肥満や力士の方もいます。
同じ1mg を投与しても赤ちゃんと力士では影響力が違うので、ガンマ計算でも体重を考慮します。

体重換算は実はそんなに難しくありません。
赤ちゃんや軽い人には少ない量でも影響力が大きいのでガンマは大きくなります。
一方高度肥満や力士のような大柄な人には影響力は小さいのでガンマは小さくなります。

上記が換算表になりますが、中級までの知識で黄色い部分の50kgの人のガンマ計算はできるはずですので、あとは体重に合わせて計算するのみです。

では先ほどのNadを使用して考えてみましょう。先ほどはいずれも体重50kgの方の計算でした。

①の組成を100kgの人に投与する場合、1ml/hのガンマはいくつでしょうか。
影響力が少ないイメージですから、
1ml/h = 50(kg) /100(kg) [γ] = 0.5γ
となります。

では25kgの場合はどうでしょうか?薬の影響力が大きくなるので
1ml/h = 50(kg) /25(kg) [γ] = 2γ
です。

なんとなくイメージは掴めたでしょうか?

5.確認問題

では最後に

2ml/hのシリンジポンプ
https://www.kango-roo.com/mv/265/

体重75kg の人に③の組成のNadが上記写真のように2.0ml/hで繋がっています。これは何ガンマでしょうか?

③の組成は12mg/50ml (= 3/12.5 mg/ml)
ですから体重50kgの時、
1ml/h = 1/12.5 γ
2ml/h = 2/12.5 γ =0.16γ
体重75kgですから
2ml/h = 0.16γ x 50/75 = 0.106γ
となります。

ちなみに実際は暗算でやりますので
0.16γ x 2/3 ≒ 0.15γ x 2/3 = 0.10γくらい
とします。
また1/12.5 = 0.08が暗算できなくても、同じ職場である限り組成は変わらないのでそのうち暗記してしまうと思います。


みなさん、お疲れ様でした。
少しは役に立てたでしょうか?

最後に、薬には最大流量が決まっています。
最大流量のガンマを元に、体重50kg の人では何ml/hまで使えるかを計算してみましょう。
基本的には今回行ったことの逆をするだけですから、ここでの紹介は割愛します。
要望が多ければ別の記事で紹介します。

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この記事を書いた人

[専門] 救急、集中治療
[資格] ICLS、BSL、ACLS、PALS、JPTEC、JATEC、JETEC、MCLS
[所属学会] 救急医学会、集中治療学会、中毒学会、外傷学会
[趣味] マラソン、テニス

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